横浜市中区
野毛町3-133

045-231-0646

17:00〜20:30
土日月休
地図はここ

酒はコップに3杯まで。

つまみは、おからと玉ねぎの酢漬けが最初に出て、
鱈の身入り湯豆腐、納豆と進み、シメは漬けもの。

これがこの店唯一のコースであり、コップ酒3杯込みで
しめて2,000円なり。

最初にビールを頼んだり追加で里芋などを頼むことは
できますが、コップ酒は3杯飲んだ時点で終了。
どんなに常連でも、このルールが破られることは
絶対にありません。

そして、外観はただの民家。
看板ひとつなく、暖簾も下がっていません。

それでもいつも満席。
夜になるとこの小さな家から、大人たちの悦びに
あふれたざわめきが聞こえて来るのです。


横浜の古い繁華街、野毛。
東横線桜木町駅の廃止とみなとみらい線の開通で、
その賑わいに少し陰りの見える街ですが、いまも
特徴のある店が数多く並んでいます。

この店は戦後すぐにここで開業しました。
“酒はコップに3杯まで”というルールは、先代である
父親が戦前、酒販店で立ち飲みををやっていた時に
作ったもので、みんなが楽しく飲めるように、そして
ほろ酔い気分で家に帰れるようにとの気配りから
生まれたものだそうです。

いま、この店を守るのは80歳前後のおばあさん2人。
先代のご主人の娘たちです。
2人はいまはほとんどカウンターのなかで料理を担当、
コップに酒を注ぐのはアルバイトの若い女の子などに
なってしまいましたが、それでもにこやかに客を迎えて
くれています。

酒は「櫻正宗 上撰」のみ。
土瓶でややぬるめの燗をつけられ、客席でコップに
あふれんばかりに注がれます。とりわけ上質という
わけではないのですが甘くなく素性のいいお酒、と
いった感じのもの。

つまみも素朴な味わい。
とりたてていい、というわけではなく、酒も会話も
邪魔しない、そんな感じのひかえめなつまみです。


しかしこの店、言い方を変えれば、
酒も飲みたいものを飲みたいだけ飲めない、
つまみも選べないような不自由な店。
本来ならばこんな店は敬遠されてしまうはずなのに、
この店の何が多くの人々を引き寄せるのでしょうか。


それは、長い年月が作り上げた雰囲気です。

“酒はコップに3杯まで”“つまみは決まったコース”。
こうした不自由さがかえって安心感をもたらし、
“選べない自由”を楽しむような気にさえなってきます。

そして客もまたこの店のシステムを尊重することで
この店の雰囲気と一体化し、席を譲りあい、和気
あいあいと楽しいひとときを過ごせるのでしょう。


今回、私が相席したテーブルには、かつて医者だった
という老人が、先客のサラリーマン2人組を相手に
この店の昔の話や、自分の医者時代の話をずっと
していました。先客2人は喜んで聞いていましたが
たぶんこの老人は、毎回ここに来ては同席の客に
同じ話をしているのでしょう。
そんな人間観察もまた、この店ならではの楽しみです。


“かわらないこと”の素晴らしさを教えてくれる小さな店。
願わくば、いつまでもいつまでも続いてほしい店です。



外観は普通の民家で看板もない


玉ねぎの酢漬けとおから
右上の豆はビールのつきだし


鱈の身入り湯豆腐


なみなみと注がれたコップ酒と納豆

しめの漬け物


カウンターの上にある
昔の銅製の燗つけ器


追加の里芋(衣かつぎ)

コースのみ 2000円
(玉ねぎの酢漬け おから 鱈豆腐 納豆 ぬか漬け コップ酒 3杯まで)

オプションとしてビール(小瓶500円・豆つき) 里芋煮(400円) などあり


このページのURL:
http://www.totteoki.jp/shibuya/musashiya.htm


2005・5